砂漠の中の土でできた一軒家

子羊が遊んでいるのにつられて近づいてゆく

一瞬の砂嵐が去ったあと

マントを風になびかせた青年が一人

ボンジュール、ムッシュー

ボンジュール、ムッシュー、サバン?

サバン? ウイ、ウイ!

その家にモハメッドがいた

モハメッド・アリ

彼は砂漠の大トカゲ

恐竜のようなグロテスクな姿に、はじめはオッカナビックリ

触ってみる、動かない

握ってみる、動かない

引っ掻いてみた 走りだした

シッポが恐竜みたいで格好いいんでっす

だんだんと好きになってきました

モハメッドという青年が、いらないというのに、くれるという

いらないというのに、トカゲの口を針と糸で縫いつけて、僕にくれました

それで、名前をモハメッド・アリにしたのです

彼は一週間、僕のジラバのポケットのなかで、一緒に旅をしました

ある時、元気がなくなり、動かないので

砂漠の砂の上に置くと、もの凄いスピードで

砂漠の中に消え去りました

なぜ、口をふさいだトカゲをくれたのか、今でも謎です

へんなの?!

{人々」モロッコ

’73/2 モロッコ