月も冴え冴えと凍るような激寒波である。
昭和45年?以来の寒さらしい!

さてさて、すっかり間があいてしまったが、
カプリ島の、ボートで、“青の洞窟”に行く途中の、
はるか断崖の上を見上げた所にあるのが、ホテル・カエサル・アウグストである。

ハイシーズンの過ぎた港で、パラパラと降りた客たちが思い思いの場所に向かった後、
行く先を決めていない私達に声をかけてきたのが、タクシーのドライバーだった。
「いいホテルがあるから案内するよ!」
こういうシチュエーションの場合、たいてい、あまり望まない場所に案内されることが多い。
まあ、今回もそんなことだろうと言い合いながらも、
どこといって決めている宿もないのだし、時間もまだ早かったので、
いわれるままにタクシーに乗り込み、連れて行かれた先がホテル・カエサル・アウグストだった。

ハイシーズンも終わり、1週間後には休業する、と言う時期で、
ホテル内は閑散としており、メンテナンス用の資材が運び込まれていたりして、
レストランも終了しており、ピッツァくらいしか用意できないとのことだったが、
とにかく、その眺望が素晴らしかったので、泊めてもらうことにした。
こういったパターンで、話に乗って良かったぁ~という稀なケースです。

宿泊客は、私達二人だけ。
オーシャンビューの真ん中あたりの部屋に決め、
ドアも窓も開け放って、風に吹かれながら、
海のかなたを望めば、
オレンジ、ピンク、クリーム、パープルに染まる夕暮れを独り占めである。
黄昏にソレントの灯りがひとつまたひとつと増えてゆくのである。
建物もぼつぼつリニュアルが必要な時期を迎えていて、
当時は、家具もだいぶ古かったが、
それはそれで旅情をかきたてる風情があった。

今はどうなっているのだろう?
と思って、「ホテル・カエサル・アウグスト」と検索したら、
リニュアルされて、素晴らしいラグジュアリーホテルに生まれ変わっていた。
建物の形状、外観の色もクリーム色で当時と同じだった。

カプリといえば、“青の洞窟”であるが、
“青の洞窟”は晴れた日の午前中でないとダメである。
ボートで、岩の小さな割れ目から、
“いちにのさん!”で頭をかがめて入って行くので、
海が荒れている時には、入ることは出来ない。

幸い、私達は最高のシチュエーションに恵まれた。
洞窟内の滞在時間は、ほんのわずかなので、
船頭にチップを渡して、特別に2回分、洞内に留まり、撮影した。
外光が湖底に反射して、ボートのシルエットが浮かび上がり、
真っ青な中を無重力で浮遊しているような幻想的な光景だった。

美しかった!!!

この時の写真は、
旅行社のパンフレットや案内書に、よく使われた“良い子”である。