何かが狂った
自分流の旅を壊して
二人の英国女性と旅行を共にする
はじめのうち
旅は自分のペースであったが
その中ごろになって 逆になる

アフガニスタン
それは我々の住む時間 自由世界とは違う
モスレムの戒律で縛られた
男優先の世界だ
彼らの脂ぎった目線に
二人の女性は白い体を曝している
郡狼の眼の中に
白い肉を投げ入れたようなものだ

バーミヤンでの夜 宿の暗闇の中
夜這って来た男を殴り倒し
部屋の外に蹴り出した
ある時は
狼たちの眼から彼女たちを守るべく
二人の無防備に しつこく注意する
イラついて 私の気持ちが沈むのを
彼女たちは楽しんでいるようにも見える

何か変だ
何か旅のリズムが狂っているようだ
二人のために
彼女達のためにと用心しているのに
勝手にしろ!と思いながらも
そばを離れることが出来ない
危険と背中合わせに見える
全くわかっていない!

恋をしているのか
かといって、そうでもない
ただ 別れるまでエスコートしたい
早く、この数日が過ぎないものか
此処は我々の価値観の世界とは違うのだ
今なお 盗賊は出る テロリストはいる
狙われるキッカケを見せないように
誰が 盗賊に変身するか解らない?!
この男達だけが集まった
脂ぎった目線が判らないのか

何のために苦しんでいるのか
コミニュケーションが難しい苦しみ
どう伝えれば良いのか・・・
悪しざまに伝えれば
アフガン人を貶めることになる
残酷にも 今や
彼女達から煙たがられているようだ
何と思われようと 離れるわけにはいかない
笑われようとも
少し狂った男のようでも
寝るときは二人のそばで寝る

我ながら 可笑しくって
涙も出やしない

( 1973.9  アフガニスタン )