ガンガ  (一)

ガンジス川の畔で 数人の男達が車座になり
チェッ、チェッ、チェ~ラン
チェ、チェ、チェ、チェ、チェ~ラン
チェ~ラン、チェ~ラン!
チェ、チェ、チェ、チェ、チェ~ラン
チェ、チェ、チェ、チェ、チェ~ラン
チェ~ラン、チェ~ラン!
ちっちゃなドラとタブラと風琴の伴奏で
二十四時間 この歌が続く
ガンガの畔
そして
ギュシュ、ギュシュ、ギュシュ~ウ
ギュシュ~、ギシュ~、ギュシュ、ギュシュ!
肉付きの良くない老人の 腕と足が少しだけ太くなる
ギュシュ、ギシュ、ギュシュ、ギュシュ!
チャムロタクシーの運転手
体重の無い身体は勢いが足りない
一ルピーのために、全体重をペダルに乗せる
ギュ~シュウ~!ギュ~シュ、ギュ~シュ!
様々な音が交差する
ガンジスの畔
生きるのは楽じゃない
二十四時間歌い、祈り続ける

ガンガ  (二)

ガンガのほとり
人を焼き
その残り火を ガンガへ洗い流す
それを魚がすぐ食べて
その魚を、人間が釣り上げて
アッ! という間に料理され店に並ぶ
ガンガフィッシュとして
その魚を 人が食べる
魚を食べた その人が死んだら
焼かれて 灰になり
ガンガに流される
それを ガンガフィッシュが食べる

生と死 輪廻のドラマ
ガンガは流れる

ガンガ  (三)

バーニング プレイス
今日は 大繁盛
死体のスペアこそ置いては無いが
適当な、供給と需要のバランスで
ニューワンが運ばれてくる

焼かれているのは数カ所で六体ほど
素材が人間というだけで
バーベキューそのものの実態
子供が 焼き場の上
上昇気流に乗せて凧あげをしている

死後も 貧富の差があり
金持ちは沢山のマキで景気よく燃やされ
きれいに灰になる
貧者はマキも少しで辛い
頭は中身が濃いためか焼けにくい
まるで 魚の頭が焼けるのと同じだ
人間は 物であることを実感する

それでも焼けない時は
太い竹の棒で打ち砕かれ
ガンガに流された
その後は 例によって
プカ、プ~カ、プカプカ
太古より流れ続ける歴史
霊気漂う ガンガ

(1973,11  インド)