ミコノスには、白い町と青い空と海、デロス同盟のデロス島と、もう一つの名物、パラダイスビーチがあります。ある日、N夫妻とビーチで会う約束をして、ユースで会った日本青年と出かけました。水泳パンツを忘れたというと、彼等は、そんなの必要無いよ、みんな裸で泳いでいるんだから、と言う。安心して彼の地に着くと、他の連中はパンツを持っているじゃありませんか。こち虎、しかたが無いので素裸になって泳ごうとしたが、初めのうちは、やはり何もつけていない女性が側にいる所なので、私のせがれの方がハリキッて海に行きたくても行けない状態で、エキサイティングが修まるのを待っている間に考えたネ、これは一つのゲームなのだ、と。
 なにしろ、誰も見る人間がいなければ、裸でも着て泳いでも関係がないのですネ。だから暗黙の了解で見ない振りをしてチラッと見るのが楽しみなのでしょう。そう思い始めると心が落ち着いてきた。私たちは、絵画その他で西洋人のそれを見慣れているが、彼等にとって東洋人のそれは興味が有るのじゃないか? となれば、これは世界にとって重要かつ親善に貢献することになるのではないかと、恥ずかしさを捨てて見せてやることにする。
 しばらくすると、N夫妻がやってきたので、裸では失礼と思い、ジーンズを着けていると、夫人が、どうして泳がないの?と聞くので、今日はパンツを持って来なかったんですと言うと、皆裸で泳いでるじゃないの、平気よ!泳ぎなさいな、と言う。それじゃ、お言葉に甘えてズボンをとらせてもらうと、言った当の夫人が照れたらしく、伏し目がちにコチラを見ない。なにしろ、現在の私の写真ではN氏にかなわないんだから、せめて、若さでだけでもかたなくっちゃ。夫妻はほんの少しだけいて、ホテルが取れなかったので、間に合えば今日の船でアテネに帰るといって、パラダイスから船に乗って帰った。もし宿が取れれば戻るといわれて別れたのだが、そのまま逃げ切られたようであった。残念。
 ユースのベッドでは、ダニか南京虫がいるというので、最後の晩は、小さな教会の出口で、スリーピングバッグにくるまって寝る。金を払ってユースに泊まるのよりも多分にファンタスティック! 空いっぱいの星と、海辺のさざ波を子守歌に心地よく眠った。