1. ケルンのドーム

カテドラルに入る

はじめに

建物の巨大さに圧倒され

地底から 天にも昇らん

アラベスク模様と ゴチック建築の偉容

神とは何と 大きなものか

 

神を持たない 私に

教会は

ステンドグラスの光 と

音楽をもって

無言のうちに攻め立てる

人間の小ささを押し付ける

パイプオルガンは歌う

人は小さい、小さい小さい、小さい・・・・・

神は偉大だ、偉大だ!偉大だ!偉大だ!・・・

 

 

2.ベルリンの壁

ベルリン市

西ベルリンより、東ベルリンに入る

まったく異なった世界(都市)へ来たようだ

かつての ドイツ帝国の栄華を偲ばせる

第建造物の廃墟が立ち並ぶ

その どれにも残された無数の弾痕の跡

人間の恐ろしさ

人間の愚かさ

人間のかなしさ が

切々と沁み渡ってくる

ドイツの人びとは

もっと理詰めの民族だったはずだ

 

ある時代、ある時

ほんの数年間持った 強い狂気のため

戦後の数十年間 現在まで

一つの民族が 分断され いがみ合うとは・・・

 

人間が

人間の最大の尊厳である

自由を

人間 そのものを

コントロールするとは

人間の

恐ろしさと 悲しさ

人間であることの喜びが判らなくなってしまう

他の大きな力、利害が

第三者であるドイツを分断?・・・・・

 

ドイツは 悲しや

 

 

3. 18歳 ピーター・フェシター 1962・8・19日

ピーター・フェシター

十八歳の彼が

フリーダムを知らない彼が

壁を乗り越えようとして射殺された

 

十年の時が過ぎて その壁の前に立つ

彼が倒れたその前に バリケードと

花環で飾られた 木の十字架

その中心にある

古ぼけた写真の彼は 十八歳

未だあどけない

バリケードで飾られた十字架と 数本の花

彼の小さな写真の周りには

羽で作った深紅の花が絡み付いている

今でも彼の体から流れ出る血のようだ

その横に立つ哀悼旗

 

もう一枚の写真は 彼の地面に倒れた姿

十八歳のピーターが

自由を求めて撃たれて死んだ

その壁が今も目の前にある

人間は

人間は

 

自由だ!!

(1973.5  ドイツ ベルリン)

 

 

4.大伽藍

ケルンのドーム

大伽藍に入る

暗闇の中にステンドグラスの数条の光は 色彩の洪水となり

目を覆う

天地も裂けんばかりの

パイプオルガンの響きは

脳天を直撃する!

伽藍の下では

人間共が 虫けらのように

小さく 這いまわっている

 

神が造ったか

人が造ったか

 

その大伽藍自体が 世界となり

宇宙となり みんな飲み込まれてしまいそうだ

神  位  光  音  物

 

( 1973.6  ケルン )

 

 

5.旅

私は

夕暮れの時の旅は嫌いだ

多くの人々が乗っていた列車やバス

少しずつ人が降りてゆく

 

真っ赤な夕日が沈んだ後の

トワイライト

何処まで 一人だけ残されて行くのか

ガランドウな車内に 列車の走る音だけが木霊する・・・

何処かへ

異なった世界へ走り続けるようだ

ガラス窓に 残された

私の顔が 別人のように映る

 

( 1973.6  ドイツ )

 

 

6.旅

旅が 日常になり

生活に なったとき

 

安宿の一室が実に楽しい天国だ!

ベッドの上で久し振りに

母の写真を見る

 

(1973.6  ドイツ )

 

 

7.旅

旅に出る

持参しただけの旅費

けっして増えることがなく

減っていくだけの金で

長期間 旅をする

ほんの少し

負けてもらい 礼を言い

安いホテルを探し 礼を言いながら

旅を続ける

 

人々の善意に助けられ

旅人とは 托鉢にも似たもの

物乞いにも似たもの

修行僧にも似たもの

 

(1973.6  ドイツ )