お彼岸に墓参りに行く途中、
横浜で坂脇さんと会ってお茶することになったので、
「1000円でトレビアンなワインライフ」という
宝田久人のブルゴーニュのワイン紀行文の載った10年前のフリー冊子と共に、
そのコート・ドールを徒歩旅行した2006年もののワインを差し上げたら面白かろうと思って
前夜、地下のワインの中から一所懸命2006年もののピノ・ノワールを捜したが、
なかなか見つからなかった。
宝田の集めていたワインは、「1000円でトレビアンな」デイリー・ワインだったから、
亡くなった後、飲みきれないワイン達を差し上げたり、写真展のパーティで使ったりしているのだが、
比較的新しいものは、まだもつかなぁ~と思って残し、
かといって、あまり古いのは味が変わっているといけないという思いから、
ちょうど、その頃前後の生産年のものを差し上げるようにしていたためで、
しかも、気がつけば、いつしか、フランスのものはボルドーばかりになってしまっているのだった。

やっと見つけた2本のうちの1本をリュックに入れて出掛けたのだが、
会って聞いてみたら、坂脇さんは下戸なのだった。
なぁんだ、昨夜の必死の探索は何だったのじゃ!
坂脇さんは、「千年の樹」を編集してくれた方である。
「ワイン、どのくらいに減った?」と聞くので、
「1700本くらいあったのが、今は、数百くらいかなぁ。料理に使ったりしても、私の一生分は残ってる。」

それで、11年前の今頃、コート・ドールで徒歩旅行する私達と同じ空気を吸っていた、
2006年という特別な年に収穫されたピノ・ノワールで作られたワインを、
またリュックに戻し、お墓に供えたのでした。

思い出すなぁ~!コート・ドールの燦めくような光と、
ブドウ畑を吹き抜ける爽やかに匂い立つような風!

そんな訳で、2日もリュックで揺られることになったワインを、
帰宅後、開けてグラスに満たし、ゆっくり口に含む。
夜風に吹かれながら2006年に思いを馳せながら。
もう、11年も経ってしまったのか~!

暑さ寒さも彼岸まで、のとおり、
朝晩は、すっかり涼しく、肌寒いほどになり、
庭には、いつの間にか、コスモスが咲き揺れている。

翌朝、アトリエのドアの前で、メジロが死んでいた。
ちょっと前まで、梅や桃や梨のあいだを飛びかっていたのだろうに・・・
その周りだけ、静謐な空気で満たされているようだった。
しだれ桜の根元に、そっと埋めて、水と赤ワインを供えてあげた。